進めなくても、跳べる

ズーカラデル『JUMP ROPE FREAKS』
発売中
ALBUM
ズーカラデル JUMP ROPE FREAKS
数年前、この1月で閉館する新木場STUDIO COASTで初めてズーカラデルのライブを観た。その日、イベントに出演していた彼らについて、僕は予備知識を持っていなかった。だから、観て驚いた。不器用そうな3ピースバンドが、その楽曲の力だけで、STUDIO COASTのフロアを、奥の奥まで揺らしていた。

あの日、感じたこと――余計な装飾はいらないこと、アンサンブルの喜びと豊かに輝くリズムやメロディがあれば、音楽はどこまででも飛んで行けること――を、この2作目のフルアルバムを聴いて改めて感じている。共に歌い踊ることが困難な時代にあって、それでも1曲目“まちのひ”はシンガロングアンセムとして聴き手を迎える。歌われるのは、《まだ旅の途中 全然進んでないけど/今 部屋の鍵をやっと開けたところ》――そんな、手のひらで確かにすくえるだけの希望。それでいい。参考書みたいな嘘だらけの希望はいらない。必要なのは、この小さくてもリアルな希望。全部無駄だとしても、すべて夢のように忘れてしまうとしても、それでも、今この瞬間は、跳べる。そうやって僕らは、次に行く。(天野史彬)

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