すでに時代のアイコンとなった感のある稀代のボーカリスト＝長屋晴子をはじめメンバー4人が個々に作詞作曲を手掛けながら、卓越した表現力と演奏力を発揮する――つまりどこまでも「バンドらしい」バンドでありながらも、緑黄色社会はバンドの固定観念とも個人のエゴとも無縁な「音楽集団」であり続けてきた。通算3作目、メジャー2ndアルバムとなる今作『Actor』はまさに、「己の表現」よりも「音楽を紡ぎ演じる」ことに主眼を置き続けてきた緑黄色社会のひたむきな挑戦精神が結実した、歌とポップの黄金律そのものの名盤だ。

“LITMUS”や“結証”、“Landscape”など、14曲中7曲がタイアップ曲としてすでに世に出ている楽曲ながら、そこから浮かび上がる4人の現在地は破格の眩しさに満ちている。長屋の歌の訴求力を信じ、お互いの音楽的包容力を信じることで、自分たちの音楽により一層の輝度と彩度を与えることに成功している。この国の音楽有史以来の課題たる「日本語とポップスの間の壁」すらも、その涼やかな創造性で軽やかに超越しつつある。いよいよ目が離せない。（高橋智樹）

『ROCKIN'ON JAPAN』3月号より