新たな決定打、成る

KICK THE CAN CREW『THE CAN』
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ALBUM
KICK THE CAN CREW THE CAN
オープニングの“THE CAN (KICK THE CAN)”における高速かつ超高度なマイクリレーの鮮やかさが象徴的だが、技巧の限りが尽くされたがゆえの並々ならぬ緊張感が全編に張り詰めている。また、硬軟織り交ぜながら随所にパンチラインを忍ばせるKREVA、ゲームネタを多用しバラエティをもたらすMCU、そして固く韻を踏みまくり見せ場をかっ攫うLITTLEという「キャラ立ち」が各楽曲で改めて徹底され、三者三様のラップの凄味が堪能できるのも印象的。重厚にグルーヴするトラックを従えた硬派なラップナンバーを主としつつ、終盤には先行曲“Boots”で一旦メロウに振り、“玄関”で再度ハードなラップを魅せたうえで、最後にボーナストラック的に大名曲“住所 feat. 岡村靖幸 (Extended Ver.)”を配し締めくくる構成も完璧と言っていいだろう。彼らとしてもこれほどストイックなラップアルバムは初のはずだが、これこそが今日のキックなのだと胸を張るべきクオリティがここにある。自らが持つすべてを絞りつくした現在だけが未来へと繋がっていくのだということを、この作品はどこまでも気高く物語る。(長瀬昇)

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