身の丈に合った範囲で最大限に楽しさを生み出すのは万人に許されていることであり、手近な何かをフレッシュな表現に結びつけるストリートカルチャーの原動力はそこにある……というようなことを改めて考えさせられるのが、変態紳士クラブの音楽だ。どんな組み合わせをしても自由なうえに、思いつくままにいくら使っても無償な「言葉」と「音」を最大限に活用しながら自分たちが抱えている想いを的確に描き、「今日もなんとか生きてやったぞ！」と胸を張る姿が、彼らの作品には常に刻まれている。4曲が収録されている今回のEPもそうだ。韻や言葉遊びを重ねるほどに喜びに溢れていくニュアンスがあり、彼らの生活を取り巻く空気感も鮮やかに封じ込められている“Zombie Walk”、心を蝕みそうになる鬱屈したエネルギーを打ち砕く雄々しい姿勢が見える“Frustration”などは聴いていると本当に胸に沁みるし、無意識のうちになんだかニヤニヤしてしまう。向き合った音の世界に自分と地続きのものを感じ取ると頼もしい仲間を得たような気がしてくるものだが、まさしくそういうものを届けてくれる作品だ。（田中大）

『ROCKIN'ON JAPAN』6月号より