直木賞作家4名とのコラボプロジェクト第3弾楽曲は、辻村深月「『ユーレイ』――はじめて家出したときに読む物語」を原作とした“海のまにまに”。軽快なホーンサウンド、ikuraの弾むようにリズミカルなラップパートを盛り込んだ、朗らかでセンチメンタルなこの曲はしかし、その歌声が涼やかに響けば響くほど、そこに秘められた想いのスリルと切実さがくっきりと浮き彫りになってくる。「この曲の世界観の中で聴きたい音/響いてほしいフレーズ」を紡ぎ出すシビアな選球眼はもちろんのこと、「響いてほしくない音/響くべきではない音」を丹念に濾過するAyaseの意匠は、バンドアレンジとは似て非なる精緻な音と歌の黄金律を編み上げるに至っている。そして、ビブラートやスタッカートの一つひとつに明確な意味と感情を託しながら、ikuraの歌はよりいっそう輝度と透度を増して、刻一刻と胸に迫ってくる。《視えてしまった出会ってしまった/そんな君と二人で/花火の封を切った》の3行に織り込まれた瞬間と永遠――その美しさはそのまま、
YOASOBIが世界と/人間と対峙する視線の美しさに他ならない。(高橋智樹)
『ROCKIN'ON JAPAN』1月号より