提供曲では果敢に新しい発声に挑戦する菅原だが、自身の手による楽曲では歌詞に綴られている景色などが具体的なのもあってか、心の奥にある感情を丁寧にろ過するような歌が耳に残る。時代に左右されない伸びやかで無理のないメロディ、聴き手の感性を刺激する散文的な歌詞、洗練された現代的なサウンドデザイン。それらが融合し、繊細な寂寥感を纏いながらも、前を向いて歩いていくという内に秘めた屈強な意志が立ち上る様もすがすがしい。新曲“lien”は天邪鬼でとりとめのない高純度の愛情を綴った歌詞、ドリーミーでエッジの効いた音像がやわらかに溶け合う。中でも感情の揺らぎを落とし込んだたおやかな歌声は、自分がこの楽曲の《君》かと錯覚してしまうほどの求心力だ。(沖さやこ)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2月号より)
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