童話『赤ずきん』を読んだ時、狼に対して、「さすがに、その変装で騙そうとするのは無理があるのでは?」と子供ながらに思った人はきっと少なくないはず。この曲は、多くの人が一度は抱いたであろう違和感を膨らませ、それを豊かな推進力としながらメタ的に童話に切り込んでいく痛感なナンバーだ。イントロやドロップパートなどに挿入されるボーカルチョップが鮮やかなアクセントとなっていて、何より、《子供のあたしも2度見したね/童謡の中で動揺したね》というパンチラインが象徴的なように、狼よりも一枚上手な赤ずきんを描いた同曲は、コミカルでありながら鋭いカウンター性を放っている。このように、ポップな表現の中にエッジーな要素を大胆に盛り込んでいくスタイルはまさに水カンの王道であり、二代目の「主演」として同プロジェクトを力強く牽引する詩羽のラップや歌唱は、同曲において今まで以上に流麗なしなやかさを獲得している。昨年の“エジソン”の特大ヒットも記憶に新しいように、新しい世代のリスナーを巻き込みながら展開していく水カンの新章の物語に、ますます期待が高まる。(松本侃士)
(『ROCKIN'ON JAPAN』3月号より)
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