今年1月のシングル“名前は片想い”は見事バイラルヒットとなり、4月には『蒼の音』『朱の音』という2編のベストセレクトプレイリストを公開したindigo la End。間を置かず届けられた新曲“瞳のアドリブ”は、表面的には極めて率直でアップリフティングな疾走感が心地よいギターポップ作である。しかし、《あなたの手を取りたいのに アドリブがきかなくてダメ 雨が次のセリフ》という歌い出しの歌詞1行からして、情景と物語の喚起力が凄まじい。雨の湿度や靄がかかった視界までをイメージさせるサウンドスケープといい、現実には何も起きていない《あなた》との距離感の中で忙しなく動き回る思考と感情のスピード感といい、物語を描き切る音楽表現の宝庫なのである。文章や映像など、ドラマティックに物語を伝える手段はさまざまあるが、indigo la Endは敢えて率直なギターポップという形式に則ってそれをやる。ぜひじっくりと楽曲に向き合い、クライマックスの甘酸っぱいスリルを味わってみてほしい。テクニカルなバンドの表現力が、ここにきてさらに1段階上の新たな結実を見せた楽曲だ。(小池宏和)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年6月号より抜粋)
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indigo la End『瞳のアドリブ』
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