自身の代表曲が生まれると、次はどんな曲が届けられるのだろうと良くも悪くも注目を集めるものだ。“ノールス”のヒットが記憶に新しい中で彼らが放ったEPは、今の音楽チャート批判とも取れる辛辣な歌詞が綴られた“Kid”で、1曲目から衝撃の幕開けをみせた。しかし、それはあくまで表面的な見方にすぎず、別に彼らは他のバンドと一線を画すために尖ったメッセージを発信したかったのではない。根本にあるのは、流行り廃りの激しいシーンの真っ只中にいる当事者として、自分たちが心から愛せる音楽を鳴らしていこうと奮闘する姿である。
続く4曲では、どこか自分に自信を持てずにいるような、自嘲気味な主人公が描かれる。でも、《あなたを思って残した言葉を/あなたの居ないとこで歌うような/僕は僕が嫌い》と“Soft”で歌うのは、自分が情けなく思えても、愛を伝えることを諦めていないから。音楽の可能性にかけているからこそ、時に鋭く、時に失意の底から、様々な物語を通して不器用な愛を表現するのだ。そうやって、移り変わりの激しい音楽シーンを、シンガーズハイは勝ちに行く。(有本早季)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年7月号より抜粋)
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