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直近にリリースされた“Nagisa”では浮気のギルティプレジャーを歌うけど、そこには悲しみがある。“18”ではコロナ禍に置き去りにされた青春を振り返り未来への希望を見出しつつも、いつの間にか大人になってしまった切なさを歌っていた。最新シングル“ユートピア”では、セルフラブの大切さを歌い、心の中のユートピアを見つける手助けをするポジティブさが歌われるが、高音のストリングスは日常に潜む狂気を、うっすら聴こえてくるトイピアノは緊張感や不安感を映し出し、セルフラブが重要と歌われる時代のディストピアもこの一曲で描き切る。imaseが歌うのは複雑に矛盾した繊細な22歳の心情――どこか平熱じみたその歌い方は、時代や未来を冷静に直視するZ世代ならではの表現方法だと思う。そこに誰も拒まないグッドメロディを乗せることで、年齢も国境も越え、そのリアルが多くの人に届いている。そんなシームレスな世界こそが、imaseが歌う“ユートピア”なのではないか。そんなふうにも思えた。(前田侑希)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年9月号より抜粋)
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