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お馴染みの田渕ひさ子に加え、ドラマーにヒトリエからゆーまおを迎えた新体制で録音されたシングル。アユニ・D作曲の表題曲は、抑制された出だしからドリーミーな音色で空間を押し広げていくギターが光るポップソング。田渕作曲の“手紙”は鋭角なリズムがザクザク刻まれるギターロック。ドリームポップ~ポストパンクを横断していく2曲の連なりに、経験に裏打ちされた田渕の手腕への拍手を送りたくなるし、早速そこに順応してみせたゆーまおのプレイも流石である。ただ、やはり何より胸を打つのは、《点滅してる君を灯らせたい/刺さった棘は僕が抜く》(“飛んでゆけ”)、《あの手紙をちから込めて思い出す/「もう泣かなくていいよ」とわらって握りしめている》(“手紙”)といった言葉を真っ直ぐ歌い上げるアユニのボーカルだ。自分のことに精一杯だったはずの少女が、ロックに目覚め憧れた原風景のふたりの力を借り、他者を慮り、他者があっての自らであることを歌にするに至る。ロックの優しい魔法が、鮮やかに描き出されている。(長瀬昇)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年10月号より抜粋)
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