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「チケット100円武道館公演」で解禁、翌々日リリースされた2年ぶりのフルアルバム。もちろん作詞作曲はすべてアユニ・Dが手掛ける。かつて“丁寧な暮らし”と題しながら《世界を睨んでひたすら死んでいく》と歌っていた彼女。新体制初のシングル“飛んでゆけ”で温かいサウンドとともに《とっておきの愛の話しよう》と生活の実感を繊細に綴っていて、来るアルバムはその延長にあると思い込んでいたが、冒頭“グリーンハイツ”“春夏秋冬”を射抜く稲妻のようなロックサウンドに脳天をぶち抜かれた。そりゃそうだ、元ナンバーガールの田渕ひさ子とヒトリエのゆーまおを従えた、元BiSHのアユニ・Dの音楽表現にオルタナティブが迸らないわけがない。しかし、その言葉には《向き合って わかりあって(中略)できるようになりたい/しっかりと、私は私に》(“清く、正しく”)と、他者を、そして自分を慈しむことができるようになった精神が宿る。BiSHで命を燃やし尽くしたアユニは、この“余生”で《生きねば》と力強く歌っている。(畑雄介)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年1月号より抜粋)
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