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マルシィの恋愛曲がなぜこれほど多くの共感を呼ぶのかといえば、吉田右京の書く曲は、失恋の追憶にも幸福な思い出が色濃く滲んだり、幸福な恋愛にも抗いようのない寂しさが浮かびあがったり、決して一元的な感情に集約されない複雑で繊細な感情が描かれているから。それが「リアル」とか「生々しい」と評される所以ではないかと感じている。新曲“ミックス”はまさにマルシィが描く恋物語の魅力をひとつの楽曲に落とし込んだもの。「君」という愛すべき存在が与えてくれるのは恋の高揚感に溢れた幸福と、それと等しい熱量で襲ってくる未来への不安、心配。でもそれも含めて「幸せ」であると言い切れる爽やかさがこの楽曲にはある。アップテンポなフィリーソウル風味のサウンドアレンジが新鮮で、その軽快で清々しいサウンドにのせて吉田右京の柔らかい歌声が踊るように響く。夏の終わりに聴くぶっちぎりの恋愛曲として、またもやマルシィの新境地を見た思い。夏の終わりの儚さと永遠のときめきの“ミックス”がとても心地好い。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年10月号より抜粋)
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