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先日、フェスで水曜日のカンパネラを観た。客席から登場し、中盤では客席の中央で脚立によじのぼって歌う。水カンがやっているのは奇抜なエンタメなどではなく、人間の身体表現を突き詰める行為であると再認識するライブだった。音源でも、たとえ楽曲全体の世界観はファニーなファンタジーであっても、人間の原始的な部分を掻き消さないよう、ケンモチヒデフミによる身体を突き動かすベースミュージックのコンポーズや詩羽の声の活かし方が追究されている。偉人シリーズの新曲“聖徳太子”でも、注目を集めるようになっても等身大を保ち、同時代の同じ世界に住む人間であることを人々に感じ取らせる詩羽の佇まいをそのまま歌声に乗せて録音。一度に10人の話を聞く聖徳太子の胸中が《聖徳お悩み相談室は/本日も大好評/街に出ればすぐ話しかけられて/できるよ人だかり》などと歌われるが、身近な友人からファンまで、多くの人が自分の弱さや殻の破れなさを相談したくなる存在、詩羽こそが現代の聖徳太子なのかも。(矢島由佳子)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年12月号より抜粋)
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