グラデーションの中に浮かび上がる正体

すりぃ『グラデーション』
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ALBUM
すりぃ グラデーション
ボカロPのほか、アーティストへの楽曲提供でも活躍するすりぃが、自身の歌唱による初のオリジナルアルバムをリリースした。『グラデーション』というタイトル通り、1色では表現できない多彩さ、ジャンルレスな多様性と遊び心溢れるアレンジに翻弄される。一方で、《優しい手も淡い期待も やめていらない泣いていないから》(“ジタバタ”)という歌い出しで始まるように、歌われているのは提供曲よりもグッとパーソナルな想いだ。1曲目の“ジタバタ”で《こんな世界で歌っていこうぜ》とロックに宣言し、“炎上じゃない?”や“バカになって”では現代社会に容赦なく警鐘を鳴らす。さらに、自身が経験した別れを描いた“別れ花”、《少し楽になればそれで僕はいいから/癒えた傷を描き生きていこう》と孤独に寄り添う“花とグラデーション”で弱さも晒している。音楽は器用に操れるけれど、浮かび上がる生き様はどこか不器用で真っ当。時代を切り拓くクリエイターの「正体」を覗き見られる一枚だ。(後藤寛子)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年1月号より抜粋)


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