メンバー全員が作詞作曲に携わった楽曲たちは、大衆性の概念やフォーマットに挑むような突飛な方向ではなく、あくまでポップでダンサブルなロック──要はバンド音楽の真ん中を撃ち抜きにかかっている。その中で、“水中少女”“エイプリル”などメロディの良さに唸らされる曲がツミキの手によるものだったり、すりぃの発想力が炸裂する、シンセポップ調の音にキュートなコーラスも交えた“ネオワビシイ”のような曲があったり、1分少々で走り抜ける“FLASH FORWARD”やオルタナの香る“Casablanca”などロック色強めの曲をやまもとが手がけていたりと個々のカラーが光り、半数で作詞を手がける石野の決意や渇望が滲むリリックと、それをあくまで軽やかに歌い届けるボーカルワークも出色。おまけにバンド音楽特有の青春性まで放つ本作に出合ったら、誰もがその先まで楽しみになること請け合いだ。
文=風間大洋
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年11月号より抜粋)
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