【JAPAN最新号】1994年9月21日、そのロックバンドは空を飛んだ──大名盤『空の飛び方』、あれから30年。スピッツが僕らに教えてくれた、音楽で空を飛ぶ自由をもう一度解き明かす

【JAPAN最新号】1994年9月21日、そのロックバンドは空を飛んだ──大名盤『空の飛び方』、あれから30年。スピッツが僕らに教えてくれた、音楽で空を飛ぶ自由をもう一度解き明かす
今から30年前、一組のロックバンドが、この世界に空の飛び方を伝えた。
それはスーパーマンのようにビューンと飛んでいくのでもなく、ロボットや飛行船に乗り込むのでもなく、そのロックバンドの音楽にしか、伝えることのできない空の飛び方だった。
ロックバンドは、彼ら自身が編み出したその飛行術によって、高く、遠くまで飛んだ。一見ふわふわと浮かんでいるようで、彼らは誰にも手が届かない高さにまで舞い上がることができた。そして、彼らにしか描けない軌道で前に進み、時代すら超えてゆくことができた。彼らが空を飛ぶ姿は美しくて、優しかった。たくさんの人が、その姿に見惚れた。
そんな特別な飛行術を編み出してから30年。今でもそのロックバンドは高く、遠くに向かって、空を飛び続けている。

1994年9月21日に発売されたスピッツの通算5作目のフルアルバム『空の飛び方』。
スピッツのディスコグラフィの中でも重要な位置を占めるこの歴史的傑作が発売から30周年を迎えたことを記念した特別盤『空の飛び方 30th Anniversary Edition』がリリースされた。オリジナル盤に収録されていた11曲に加え、ボーナストラックとして近年のライブテイクが3曲収められている。
本稿では、この『空の飛び方 30th Anniversary Edition』に収録された楽曲を振り返りながら、30年前にスピッツが生み出した空の飛び方、その技法に今改めて考えを巡らせてみたいと思う。
(以下、本誌記事に続く)

文=天野史彬
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年11月号より抜粋)


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