歌は、パラレルワールドへの入口だ。jo0jiの歌もそうで、聴くとここではない別の世界に連れて行かれる。でも他の歌と違って、それはファンタジーの世界でもドラマの世界でも旅行でもパーティーでも祭りでもなくて、自分がとても慣れ親しんだ、風の匂いも言葉の訛りも知っている故郷のような世界だ。でも、現実の故郷ではない。心の中にある、自分が本当にひとりになれて、話したい時には話を聞いてくれる通じ合った誰かが近くにいてくれる、そんな近くて遠いような、でも誰の心にもある故郷だ。jo0jiの歌はそんな場所から聴こえてきて、いつの間にかそんな場所に聴く者を連れて行ってくれる。そして自分が無意識に聞きたかった言葉を、自分が救われる大切な言葉を、まるで聞き馴染んだかのような不思議なメロディとイントネーションで語りかけてくる。そうして僕たちの心は軽くなる。明るくなった気さえする。jo0jiの歌はそんな歌だ。「大丈夫、なるようになるだけ」ってことを俺らしく伝えるのにどういう言葉を使えばいいか、どういう歌い方をすればいいかは考えてる
幾つかの歌を世に出して、jo0jiは“BAE”という新しい歌にたどり着いた。この歌はjo0jiが自分と向き合って、自分自身のいびつさやひねくれた心に語りかけて、そいつらを肯定して解放してあげる歌だ。人に語りかけるのは難しいけど、自分に語りかけるのはもっと難しい。それにトライして、美しいいびつな歌が生まれた。本当にjo0jiは豊かな才能の持ち主だと思う。
“BAE”という歌を生み出したことでjo0jiは一回り大きくなり、表現者として強くなったと思う。jo0jiの壮大な物語はまだ始まったばかりだ。
インタビュー=山崎洋一郎 撮影=笠井爾示
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年11月号より抜粋)
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