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一気にアリーナ級アーティストの座へと駆け上がり、今春からはアジアツアーを控えているEveだが、リリースにおいても快進撃が止まらない。“逃避行”から間を置かず放たれた新曲“pray”は、TVドラマ『院内警察』主題歌として書き下ろされた。Eveにとっては初のTVドラマ主題歌となる。近作群では力強くダイナミックな曲調や、ダンス性とエモーションを共存させる曲調が目立っていたけれども、“pray”では4分の3拍子で循環するコードの中、痛みと無力感に苛まれる独白のようなEveの歌詞が伝う。作曲・編曲は澤野弘之によるもので、Eveが他アーティストの楽曲提供を受けるのは随分久しぶりのことになる。抑揚控えめの曲調は、孤独な魂の牢獄に閉じ込められるようなムードを生み出しており、それに対してEveは感情の蠢きをつぶさに綴りつつ、まさに祈るようにその美声で歌い上げている。厳かにして物悲しい楽曲と鬩ぎ合うようにしながら、作詞・歌唱という限定的な役回りの中でこそスキルを発揮してみせた力作だ。(小池宏和)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年3月号より抜粋)
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