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柔らかいギターのアルペジオを、清らかなストリングスが包み込むイントロで幕を開ける。椎木知仁(G・Vo)が歌い出すとあたたかいピアノが重なり、その展開からもオーケストラが主となる王道の壮大なバラードだと疑わなかった。だがすぐさまその安直な予想は覆された。山本大樹(B・Cho)と山田淳(Dr)の太いリズムセクションが加わると瞬く間に3人の演奏がサウンドを先導し、それに触発されるようにストリングスには躍動感が生まれ、すべての音が一丸となりたちまちピュアで勇敢なロックバラードを作り出したのだ。その音の中心にあるのは、大切な存在と共に過ごしたかけがえのない時間へのストレートな思い。歌詞を一つひとつ丁寧に届けるボーカルとメロディが真摯に響く。この記憶はこの先、少しずつおぼろげになるかもしれない。だが《思い出の向こう側》でまた会えたら、さらに瑞々しい喜びが生まれるはずだ。約束は過去も未来も一挙に抱きしめる大きな愛であることを、この曲が教えてくれた。(沖さやこ)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年8月号より抜粋)
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