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異常に音程の高い歌始まり、前のめりなメロディ、1番と違う2番のAメロ、拍子の制約から解き放たれたCメロ──あらゆる部分でJポップの定石を踏み外していく実験精神に満ちあふれているのに、聴いているとなぜだか体が揺れてくる。心が熱くなってくる。どんな曲よりもポップに感じる。それはやはり、Vaundyが生み出す音楽が「気持ちよさ」を至上命題としたものだからだと思う。そう考えると、上に挙げた要素はすべて4分弱の物語を気持ちよく前進させるために意図的に施されたデザインであることがわかる。自然がそうであるように、究極の気持ちよさはクリーンでプレーンな環境からは生まれない。ほどよく混じる違和感や雑味がインパルスとなって脳に快楽の信号を送るのだ。完璧な語感で耳にするりと飛び込んできながら、よくよく読めば抽象の世界を揺蕩う謎めいた歌詞もこの曲の気持ちよさに一役買っていて、こうしてVaundyの掌の上で気持ちよく踊らされる僕らは再生ボタンに何度も何度も手を伸ばしてしまう。(畑雄介)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年12月号より)
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