優れたロック・バンドは、聴き手をスカッとさせる。それがたとえ破れかぶれで、闇を志向するような音楽であっても――髭(HiGE)のパフォーマンスに触れると、そんなことを改めて考えたりする。髭(HiGE)の音楽に深く刻まれているのは、90年代オルタナロックの記憶である。しかし彼らには、うつむき加減でオルタナ的美学に浸る(ありがちな)姿勢がまったくない。卓越したユーモアと、足腰の強いバンド演奏で、彼らはディープな世界をエンターテイメントに変えてみせるのだ。
本作は、5月の新木場スタジオ・コースト公演を収録したライブDVD。代表曲をバランスよく網羅した選曲だけに、今のバンドの充実ぶりが伝わってくる。一見バラバラのようでいて、絶妙のタイム感でシンクロする各プレイヤーたち。カメラはその動きをさまざまな角度からうまく捉えている。特に、明るい照明の下でディープな楽曲を伸びやかに演奏する須藤の表情がいい。荒々しく、時には禍々しいとさえ形容できる音楽を、全力で叩きつける爽快感。これぞ、ロックボーカリストのカッコ良さだ。(神谷弘一)