メジャー・コードで敷き詰められたハード・エッジなサウンドを、チェスターの歌が更にホットかつポジティブに上塗りしていく１曲目“ファイアー”に驚く間もなく、「奴らみたいになりたくない／俺は這い戻りたい」と刃のような絶唱が響く“クロール・バック・イン”、疾走ロックンロールに乗せて「日ごとに孤独感が増していく」と吐露する“インサイド・オブ・ミー”とロックの塊が速射砲のように押し寄せてくる。チェスター本人が「リンキンに持っていけないほどダークでパーソナルな曲」と説明するこのソロ・プロジェクトの楽曲群だが、１stアルバムとなる今作を聴いて真っ先に飛び込んでくるのは、その暗黒も孤独もダイナミックで衝動的なロックのパワーでネガポジ変換していこうとする強い意志であり、その点において「冷徹な都市の暗闇を抱き締めて重力崩壊必至のスケールを描き出す」というリンキン・パークの悲壮なハイブリッド・ヘヴィ・ミクスチャー感とは一線を画している。ハード・ロックからグランジ、ピンク・フロイド的ブルース・ロックまでさまざまなテクスチャーを駆使し、時に10代の少年のように世界や社会への違和感をぶち上げ、時に身を裂くような愛に悶え苦しむ……そのリミッターが外れたエモーション大放出ぶりを目の当たりにすると、もはやチェスターにとってリンキン・パークとデッド・バイ・サンライズのどちらが表でどちらが裏なのかすら判然としなくなってくる。それくらい、今作のインパクトは強く、深く、重い。戦慄のロック・アルバムだ。（高橋智樹）