やっとだよ、やっと

ジェイミー・ティー『キングス・アンド・クイーンズ』
2010年02月17日発売
ALBUM
ジェイミー・ティー キングス・アンド・クイーンズ
UKではファースト・アルバム『パニック・プリヴェンション』で批評家からの評価を総ナメし、本作リリース時には『NME』の表紙まで飾ってしまったジェイミー・T。ずっと日本盤がリリースされないままで、言葉がかなりの比重を持つアーティストだけに、対訳は重要なのになあと思っていたら、ようやくリリースを決めてくれた。素晴らしい。

幼い頃からパニック発作を抱え、人づきあいのためにアルコールを欠かすことができなかったという、すきっ歯の酔いどれ詩人、ジェイミー・T。けれど、ひとたびマイクを握ればアークティック・モンキーズのようなドライブ感で立て板に水のように言葉を繰り出し、ディランを夢見てアコギをつまびき、スカやレゲエを当然通過したトラック感覚でバックビートを刻む。本作は、前作で登場した才能が更にスケールを上げた決定盤。ロックにもヒップホップにも居心地の悪さを感じている彼の生理感覚がそのまま音になっている。そしてリリー・アレン同様、いまやそれはUKのスタンダードな「ロック」になってしまった。世界中のぶっ壊れた郊外で聴くサウンドトラックはこれだと思う。(古川琢也)
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