アーティスト

    今なお鮮烈で異質な“懐メロ”集

    ペイヴメント『ザ・ベスト・オブ・ペイヴメント』
    2010年03月03日発売
    ALBUM
    ペイヴメント ザ・ベスト・オブ・ペイヴメント
    正直、彼らの再結成は、かなり意外だった。2年前にスティーヴンに訊いたときは否定的な感じだったし、何よりペイヴメントというバンドは、そういったものから最も遠い存在だと思っていた。95年の『ワーウィ・ゾーウィ』の時点ですでに、バンドとの間に創作面の齟齬を感じ始めていたと後に語ったスティーヴン。曰く、ペイヴメントとは「90年代という時代が生んだバンド」であり、それゆえ彼らは、00年代を迎えると同時に解散を決断した。逆に、その“時限性”を自覚していたからこそ、『テラー・トワイライト』というあの美しい結晶は最後に生まれえたのだろうし、事実、ソロ転向後のスティーヴンには、とくに2nd以降、退路を断った上での求道的な凄みのようなものが感じられた。なので尚更、今回の再結成は意外だった。ペイヴメントを再び始めることに、まず誰よりも彼ら自身にとって、どんな意義が残されているんだろう、と。

    ただまあ、実際にまだ何も動いたわけではない現段階で、判断を下しようもない。ファンへのご褒美か、それとも新規の顧客開拓のためのショーケースか。願わくは、思いっきり“懐メロ大会”をやってほしい。「90年代という時代が生んだバンド」の、完璧な再演。そしてその“懐メロ”は、おそらくスティーヴンが考える以上に、2010年にも有効なはずだ。ペイヴメントに憧れるバンドは数あれ、しかし彼らのように、あの歪で捩れたロックをあれほどまでポップに鳴らせてしまうバンドはいない。“懐メロ”のまんまで十分、それは10年後の現在も鮮烈で異質なものとして響くに違いない。その予行演習的な、ベスト盤。(天井潤之介)
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