静かに時代が変わった

plenty『理想的なボクの世界』
2010年04月21日発売
ALBUM
plenty 理想的なボクの世界
plentyの音楽は、シンプルだが人々を混乱させる。鋭い正論。誤解を恐れない極論。理屈を飛び越えた暴論。ときにはアイロニーや逆説的な表現を使って、暴論から正論へ、正論から極論へ、さりげなく飛び移る。子供のわがままな叫びと何もかも熟知したような大人が説く立派なことの繋ぎ目をなくしてしまう。そんな呑み込めそうにないはずの言葉が、神経の網目を縫うような3人の繊細なアンサンブルと、ナイフを持った天使のような江沼の声の中に溶け込んで、なめらかにすべるように喉の奥へ、胃の底へと落ちていく。そして、今まで自分達が立っていると思っていた足場が急に消えてしまったような不安感さえももたらす。そして、足場がないことが本当の足場だと実感できるまで、そう時間はかからない。『理想的なボクの世界』という、まさに正論、極論、暴論をアイロニーで溶け合わせたようなタイトルは、そんな彼らの音楽の感触を見事に言い表している。

前作『拝啓。皆さま』と、その種明かし的楽曲と上級編的楽曲が織り合わさった今作。きわめて冷静に、緻密に、不屈の精神力で組み上げられた2枚の永遠の傑作だ。(古河晋)
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