アメリカン・ショウビジネスの伝説=ジュディ・ガーランドへのトリビュート、初のクラシック・オペラ発表と、アーティストとしての領域を押し広げる、野心的な挑戦を続けてきたルーファス・ウェインライト。本作は一転、ピアノとボーカルのみにスリム・ダウンしたシンプルな作風とのことで、さすがに近年の大作志向の反動が来たか……と感じたし、以前の取材時に、本人も抑えたプロダクションへの興味を語っていた。ファンの間にも、彼の美しいテノール=素材を手を加えず味わいたい、という願望はあったと思う。
だが、放っておいても絢爛に向かってしまう「バロック体質」な人だけに、音数こそ絞ってはいるものの、グリッサンドを可憐に舞うピアノの演奏を始め、音楽そのものは痩せていない。全体的にムーディで、リズムや調子にもうちょっと変化が欲しいところだが、今年1月に母ケイト・マクギャリグルの最期を看取るという重い経験が静かな内省とメランコリーを導いているようだ。それだけに、家族の風景と絆を綴った歌詞、そぎ落としたアレンジに父ラウドン・ウェインライトが聴こえるM2、M12はなんとも胸を打つ。(坂本麻里子)