言葉数の多いレゲエのラップスタイルに惹かれて、いまやダンスホール・レゲエの女性ディージェイ(ラッパー)として唯一無二の存在感を放つlecca。前作アルバム『BIG POPPER』はそのスキルだけでなく、彼女の曲が「うた」としてのポップな普遍性を持つことを堂々と知らしめた力作だったが、今回の『パワーバタフライ』はもっと凄い。ガンガンに盛り上がれるダンスナンバーから壮大なバラードまで、全曲シングルに出来そうなクオリティのポップ・サウンドが揃った17曲に、恋愛から時事ネタまで、猛烈な量の言葉が乗せられている。そもそもアルバムごとにコンセプトを絞るのが彼女のスタイルだが、今作はずばり「言いたいことを全部言う」だろう。結果的に揃ったのは、すべての女性たちに向けられた生々しい共闘のメッセージだ。男性的な欲望の対象としての「いい女」がどうしても演じられがちなこのジャンルにおいて、これは明らかに異彩を放っている。個人的には、セックス下手の彼氏をバッサリ斬って、でもそれを言えない自分もフェイクじゃん、と歌う“too BAD, too FAKE”の鋭さにビビった。(松村耕太朗)