前作からわずか10ヶ月で新作アルバムが到着。その間には2枚のシングルも、3年ぶりの全国ツアーもあった。ここにきて異様なほどの活動の充実をみせているケツメイシである。デビューしたての新人ならまだしも、彼らのようなクラスのアーティストがこんな活動ペースを強いられるようなことはないはず。まして彼らは自分達のスタンスを守りながら音楽シーンを「勝ってきた」人達だ。となると、理由は一つ。そうする必要があったのだろう。次々と生まれる音楽と言葉を解き放たねばならなかったのだ。
≪俺ら何故歌う? 感じたまま/言い足りない事ばっかりだから≫(“何故歌う”)。≪とにかく音楽 ほかの物は無く/大好き 今日も歌い過ぎ≫(“We love music”)。今作で、彼らはかつてなく真っ直ぐに自らの音楽への思いを語る。永遠の愛を歌い、信じた道を歩むことを歌い、子供たちに笑顔溢れる未来を残すことを願う。笑いの要素はほとんどなし。聴き手の日常に溶け込む高機能なポップ性は勿論あるけど、でも、それはもっと熱くてテンションの高いものとして結実している。ケツメイシにとって、大きな転機の一作になる予感がする。(柴那典)