夢は、大きいほどいい!

ケイティ・ペリー『ティーンエイジ・ドリーム』
2010年08月25日発売
ALBUM
ケイティ・ペリー ティーンエイジ・ドリーム
ケイティ・ペリーは、実はかなりの野心家だ。デビュー作では「世界中で名前が知られているアーティストになりたい」と言っていたが、その夢にかなり近づいたところで発表する新作は、10代の頃の彼女がマドンナやクイーンやシンディ・ローパーに憧れたように、誰かをインスパイアできるような作品にしたかったのだと言う。アルバム・タイトルには、そんな想いが込められている。

この2年ぶりの新作で、ケイティはこの目標を達成したと言っていいだろう。大ヒット中のシングルに騙されてはいけない。これはアルバム中一番キャッチーな曲で皆の注意を惹き付け、そこから奥深いケイティ・ワールドにずるずるとひきずりこんでしまおうという彼女のスマートな策略だ。

アルバム・タイトル・トラックを筆頭に、夏にぴったりの最新のパーティ/ダンス・ナンバーが充実している一枚であることは確かだ。だが、AC/DCを彷彿とさせるリフで始まるちょっとダークなM6や、最高にキュートなサウンドに全く対照的な切ない歌詞を合わせたM7、ソフトな歌声とピアノの旋律が胸に染み入るバラードのM12、それから歌詞にも曲調にも深い美しさを感じるM10等、それ以外の曲が、かなり強力なのだ。どの楽曲も80年代ポップスの良さを踏襲したようなソングライティングが軸にあり、それが彼女の音楽の親しみやすさに繋がっているが、ポップスにはないほど内面をさらけ出す曲を作ろうとする彼女の姿勢には、やはりロックを感じる。そして今作は、内への踏み込み具合が前作より深い。男性陣にもぜひ聴いて欲しい快作。(鈴木美穂)
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