この2年ぶりの新作で、ケイティはこの目標を達成したと言っていいだろう。大ヒット中のシングルに騙されてはいけない。これはアルバム中一番キャッチーな曲で皆の注意を惹き付け、そこから奥深いケイティ・ワールドにずるずるとひきずりこんでしまおうという彼女のスマートな策略だ。
アルバム・タイトル・トラックを筆頭に、夏にぴったりの最新のパーティ/ダンス・ナンバーが充実している一枚であることは確かだ。だが、AC/DCを彷彿とさせるリフで始まるちょっとダークなM6や、最高にキュートなサウンドに全く対照的な切ない歌詞を合わせたM7、ソフトな歌声とピアノの旋律が胸に染み入るバラードのM12、それから歌詞にも曲調にも深い美しさを感じるM10等、それ以外の曲が、かなり強力なのだ。どの楽曲も80年代ポップスの良さを踏襲したようなソングライティングが軸にあり、それが彼女の音楽の親しみやすさに繋がっているが、ポップスにはないほど内面をさらけ出す曲を作ろうとする彼女の姿勢には、やはりロックを感じる。そして今作は、内への踏み込み具合が前作より深い。男性陣にもぜひ聴いて欲しい快作。(鈴木美穂)