何事も無かったかのような前進

ステレオラブ『ノット・ミュージック』
2010年11月17日発売
ALBUM
ステレオラブ ノット・ミュージック
昨年春に「今後レコーディングする予定はない」という発言と共に活動休止に入った……はずのステレオラブの新作が到着した。各々休暇を取った後は各々別のプロジェクトに入ると言ってた彼らが、再び5人揃ってあっさり新作を作ってしまった。タイトルが『ノット・ミュージック』だというのが少々意味深だが、それ以外の点においては活動休止宣言を覆しての新作に纏わる違和感や驚きは感じられない。むしろ本作はまっとうな『ケミカル・コーズ』と地続きの活動の成果なのだ。

ポスト・ロック的アプローチは消え失せ、普遍的ポップ・ソングへと先祖返りしたのが前作『ケミカル・コーズ』だったとしたら、本作は普遍的なポップ・ソングであることを前提とした上で、再びポスト・ロック的アプローチ――すなわち解体と再構築を試してみた作品と言えるかもしれない。極端にベーシックな作品だった『ケミカル・コーズ』を素材として、再び芽生えた遊び心とユーモア。久々にステレオラブらしい作品だなぁ、と感じる一方で、15年前の「らしさ」とは明らかに異なる。つまり宣言を覆して作った甲斐があった作品ということだ。(粉川しの)
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