桁外れの天然記念物

ザ・ミドル・イースト『アイ・ウォント・ザット・ユー・アー・オールウェイズ・ハッピー』
2011年06月01日発売
ALBUM
ザ・ミドル・イースト アイ・ウォント・ザット・ユー・アー・オールウェイズ・ハッピー
衝撃のデビューEP以来から1年と少し、ベールを脱ぐタイミングを今か今かと待ち望みつつも昨年のフジ・ロックのキャンセルによって正体開陳が先送りになっていたザ・ミドル・イースト、ようやくフルアルバムのリリースである。これが期待以上の出来、いや、期待の斜め上を行くような一枚となっているのだ。何しろ、このアルバムには禁じ手が一切ない。ネオ・フォークには禁欲的なイメージが付きまといがちなわけだが、例えばここにはオールドスクールなロックのドラマツルギーに対する忌避感すら希薄で、伸び伸びと、抜け抜けと、彼らの音楽は根を生やし芽吹いていく。USネオ・フォークが既存のロック・フォーマットに対する「対立」だったのに対し、このオーストラリアの片田舎から出てきたザ・ミドル・イーストは「共生」を示すネオ・フォーク・バンドだと、私は彼らのデビューEPの時点で感じていた。しかし、本作の共生はレヴェルが桁違いなのだ。まるでエデンの園のような、リンゴを齧る前のアダムとイヴのような、自分以外の者・物と溶け込んでいく感覚。リヴェンジ・エントリーとなったフジでこの感覚を確認したい。(粉川しの)
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