より優しく、より強く
木村カエラは、可愛くてかっこいいポップアイコンとして日本中で広く愛されているのとは裏腹に、少しでも彼女の音楽に向き合ったリスナーには、無防備なほど自身の怒りや悲しみや孤独を打ち明けてきた人だ。その表現者としての裸っぷりにいつも心を揺さぶられるのだが、それにしてもこの『8EIGHT8』のエネルギーはすごい。母親になったこと、そして震災後初のアルバムであること。それらが本作をいつも以上に大きな愛が溢れる作品にすることは当然だと思うかもしれないが、そんな生易しいものじゃないのだ。ここにはより強い意志で、全身全霊で闘うカエラがいる。でもその闘いに、一寸の迷いもない。それがこのアルバムを決定的なものにしている。自らを蜘蛛になぞらえ、自己犠牲ともいえる献身的な愛を歌う“8EIGHT8”には、「守るもの」ができた人にしか歌えない、悲しいほどの強さと美しさが輝いている。“orange”の晴れやかに響くヴォーカルも感動的だ。《キミもボクも 一人じゃない》。それが今、苦しみも喜びも全て知っているカエラが、最も歌いたい答えなのだろう。カエラにしか歌えない歌が極まった、愛に満ちた作品だ。(福島夏子)