それこそロックンロールとブルースを因数分解し量子化し尽くしたような6つの結晶に“MISOGI”“ONI”“SATORI”“ANATA”“YOROI”“RAKUEN”(※正しい表記は取り消し線入り)という名前――いや記号を与えた今回のミニアルバムは取りも直さず、GRAPEVINEがGRAPEVINE自身を解析し更新していくために不可欠な作業だったのだろう。“MISOGI”のソリッドなギターと競い合うようなブラス・アレンジや、焦燥の彼方へ疾走する“ONI”の音像を不穏に煽り立てるピアノ&シンセなど、マイケル河合誠一をプロデューサーに迎えて制作されたこの6曲の多彩さはむしろ、バインの音をカラフルに彩るためではなく、その目映いロックの核心で息づき続ける、極彩色の暗黒とでも言うべき色合いを際立たせるものだ。そしてそれによって、《善と悪とのどちらか一方/弱り出したら祀り上げろ》(“YOROI”)と「今」を冷徹に斬る批評眼も、《やがてぼくらは越えてゆくだろう/冬の吐息も夏の陽炎も》(“SATORI”)と明日を見つめる澄んだ視線も、より鮮やかに聴く者の心を射抜く鋭さを獲得している。バインはいつだって根源的で、新しい。(高橋智樹)