一昨年のサマーソニックで観たプログレッシヴでレイヴィーなセット。そして何より「Wonky」というタイトルからはフライング・ロータスやゴールド・パンダら次世代ビート・メイカーへの対抗意識も窺える。果たして8年ぶりとなる最新アルバムだが、冒頭から序盤を飾るオービタルらしいシネマティックな展開の一方、耳を惹くのはやはり終盤にかけての歪みやエディットを配したトラックだろうか。ゾラ・ジーザスが歌うM4は美麗なシンセ・ポップの域を出ないが、グライムMCのレディ・レシュールを迎えた表題曲や、また原曲のテクノ・ロックな“サタン”にダブステップ／スクリュー的な再構築を施したM7など、そこには活動休止の間～再結成後のダンス・ミュージック・シーンを踏まえた彼らの「回答」が窺えて興味深い。いわば初期テクノやレイヴ、さらにエレクトロやグリッチを通過した00年代以降の文脈を横断しながら、自身のスタイルを更新させた新たなオービタル・サウンドを体験できる作品、と評価することが可能かもしれない。と同時に本作は、彼らの90年代の代表作＝黄金期を彷彿とさせる、面目躍如の復活作でもあるだろう。(天井潤之介)