エミネムからカニエ、ウィル・アイ・アムまで、豪華アクトをフィーチャーして大成功を収めたデビュー・アルバム『ピンク・フライデー』から2年、ニッキー・ミナージュの待望の新作が遂にリリースされる。本作を聴いての第一印象は、前作と比較してより振れ幅のデカい、分裂したアルバムになっているんじゃないかということだった。先行公開された“スターシップス”ではマドンナ・ライクなポップスに90sテクノのパロディ的バックトラックをブチ込む過剰さで度肝を抜いた彼女だが、一方でリル・ウェインとコラボした“ロマン・リローデッド”のようなナンバーでは、全身凶器と化した超ストイックな攻撃型のラップを繰り出している。もともとニッキー・ミナージュという人は曲によって人格を激変させていくタイプのアーティストで、本作も全22曲、CDの収録許容範囲をギリギリまで使い尽くして描かれる多面体のポップ・ミュージックである。そこが「ただひとつの私」をアートに昇華したレディー・ガガと彼女の似て非なるところだと思うが、いずれにしても彼女がポップの彼岸に立つ特別なアーティストであるのは間違いない。(粉川しの)