悪党、心機一転のアルバム

マリリン・マンソン『ボーン・ヴィラン』
2012年04月25日発売
ALBUM
マリリン・マンソン ボーン・ヴィラン
3月の来日ライヴでは、結局マリリン・マンソンはどの日も新曲を披露しなかった。ライヴはベスト・ヒットな選曲でガンガンに盛り上がったが、以前より体には贅肉がついていたし、まだ本人の新しいモードが定まっていないのかも、と一瞬思った。しかし、ライヴ直後に取材部屋で対面した彼は異様にシャープで、わざわざ冷房を入れさせた部屋にフルメイクで現れると、新作に込めた思いを滔々と語った。それは、ここ2年は表立った活動のなかった彼が移籍を経て、いかに充実した時期を迎えているかということだった。つまり、これまでのモードをすべて燃やし尽くして、彼は新たな自分を始めるという決意表明のライヴだったのだ。

そして届けられた新作は、あの『アンチクライスト・スーパースター』から15年の歳月を経て、まさに原点回帰のアルバムになった。とは言っても、90年代のゴス/インダストリアル/ヘヴィ・ロックをまとめて蹂躙するギラギラしたポップ感ではなく、さらにその前のバウハウスやボウイの影響下で、暴力性と文学性を巧みにまとめあげていくようなサウンドが興味深い。前作でベースからギターに転向したトゥイギーが作曲の要となり、よりバンドとしての充実感があることが、こういうプロダクションに繋がったのだろう。また、歌詞のインスピレーションが『マクベス』と『悪の華』という高潔さにも、もはや由緒正しい「悪役」としての姿勢の正しさに頭が下がる。やはり、マンソンほど自己イメージにマジメな人はいないのである。噂のジョニー・デップ参加曲"うつろな愛"も中々の出来。(松村耕太朗)
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