とりあえず批評や紹介といったモードをすべてぶん投げ、聴きほれる。そうさせる説得力がガンガンとスピーカーの彼方から突き刺さってくるが、荒っぽい制御不能のノイズ成分がガチャガチャ鳴り響くのがさらに気持ちよくてたまらん。60年代ガレージ・パンクのあの肌触りがたっぷり詰まっているものの決してオールドスクールにすり寄ったようなものじゃないことはハイヴス・ファンには改めて言うまでも無いだろう。
5年前の前作『ザ・ブラック・アンド・ホワイト・アルバム』はミシシッピに乗り込みジャックナイフ・リー等と組んだものだったが、今回はそうした経験を踏まえつつセルフ・プロデュースで迫っているがこれが大正解。前作後、例によって目いっぱいのツアーを行い(ライヴ400回!)、それでなくともコンビネイションばっちりだったサウンドをさらに磨き、その勢いを少しも衰えさせることなくスタジオへとつなげていった。これ以上はないオープニングの“カモン!”に始まり、アルバム・リリースに先がけPVも公開された“ゴー・ライト・アヘッド”などを含んだ全12曲、日本盤のボーナス・トラックを入れても15曲だが、このヴォリューム感が音や勢いともぴたりとあい爽快に聴き通してしまう。ほんとにアッという間のリスニング体験で、ここまで気持ちよくさせるのは最近では珍しいしジョシュ・オムが手がけたボーナス・トラックも良いアクセントになっている。彼らの代表作でもある『ティラノザウルス・ハイヴス』(2004年)に匹敵する傑作。これを持ってすぐライヴに来てくれ!(大鷹俊一)