アコースティックギターに賑やかなストリングスが重なる表題曲。歌詞をふくめて、フェリーニの映画を連想させる夢と現実が入り混じった世界である。ただし、星野は「夢こそが正しい」とも「現実に立ち返れ」とも言わない。《妄想その手で創れば この世が光 映すだけ》というフレーズが伝えるのは、いわば夢と現実という区別を超えていくビジョンである。妄想もこの世の一部であり、光はこの世をあまねく照らす。そうした強い信念がなければ、今回の曲のようなフレーズを歌うことはできない。
星野 源はシャウトとは縁遠いシンガーだ。しかし、彼のメッセージの鋭さはハードコアなロック求道者にも引けをとらない。大空に飛び立つ鳥のように、しなやかで強靭な楽曲集である。(神谷弘一)