ムーンウィンクシーンと呼べるシーンの存在しないデラウェア州の町にて、のびのびと自らのポップ・ミュージックを育んできた6人組、スピント・バンド。幼いころから一緒に活動してきた彼らが一躍英米の注目を集め、各国のインディ・ファンをときめかせることとなったのが、一昨年リリースされた『ナイス・アンド・ナイスリー・ダン』だった。デヴィッド・バーン似のボーカリゼイションもあってクラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーと比較されたり、そのひねくれセンスがXTCを引き合いに出されたりもしたし、米新世代!と評されもした。しかし、こうやってこの最新作を聴いていると、そんなことはすっかり忘れてしまう。前作と基本路線は変わらない。でも、「これが僕たち」と高らかに宣言しているそういう作品であるし、やっぱりいいバンドだなぁと思わずにはいられないのだ。ピアノもギターも前作よりもぐっと活き活きとしているし、“サマー・グロフ”などTVドラマに起用されても不思議じゃない感じだ。ポップに疾走する30分強、歌詞のダークさと楽曲の突き抜けたポップさのコントラストが、この先もっとサウンドにも表れていくところも見てみたいなと思う。(羽鳥麻美)