高純度の真実

ザ・スクリプト『ザ・スクリプト』
2008年10月22日発売
ザ・スクリプト ザ・スクリプト - ザ・スクリプトザ・スクリプト
以前『rockin’on』誌の新人紹介コーナーで彼らについて書いた時には「英国内では話題沸騰中」だったが、今や世界各国のチャートで1位を獲得している彼らのデビュー作。ヒップホップに影響を受けたリズム、アイリッシュの流れを汲む広大なサウンド、丁寧に作りこんだ繊細なメロディ、情感あるボーカルの伸びのある歌声、社会や人間関係をリアルに見つめる鋭くも切ない歌詞、そしてメンバーの謙遜・実直な態度……と、彼ら&彼らのデビュー作の魅力を挙げ始めると本当にキリがない。ヒップホップとメロディアスなロックの融合自体は別に今に始まった事ではないし、特にマルーン5のように、サウンドが非常に良質でスクリプトに全く劣らないようなバンドだっている。だが、それでもやはりスクリプトは突出している。そう言いたくなるのは、彼らの音の中にある重さ。これに尽きると思う。彼らの土台となるのは、アイルランドの伝統音楽やアイリッシュ・ロックといった厳しい歴史の中で育まれたバラードであり、後年彼らが好んで聴いてきたアメリカの黒人音楽は、そんなアイルランドという国の、しかも貧しい地域で育った彼らのアメリカへの憧憬そのものだった。ここが母国で母国のロック&ラップを聴いてきたバンドとの違いだろう。つまり彼らはロック×ヒップホップという音楽を奏でることで、アイルランド人故に背負う苦労×将来への強い希望という彼らの半生そのものを具現化しているのだ。だから彼らは自分たちの音楽に誠実にならざるを得ない。だから彼らの音楽は彼らのリアルでしかない。そしてそのリアルは、斯くも人の心に沁みるものなのだ。(上田南)
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