掟破りの40分間１曲アルバム『Electric』の次の一手はいったい何かと思っていたら、『夢でさよなら』と、髭にしてはやけにセンチメンタルでウェットなタイトルの４曲入りシングル。表題曲“夢でさよなら”は、ざっくりとしたシンプルなアンサンブルから、須藤寿が素直に歌を歌い始める、という驚きの始まり。思いきり振りきった「髭流歌もの」であり、照れくさくなるほどまっすぐな「歌」が聴こえる。歌詞も、シーンをかき回す愉快犯の顔ではなく、タイトルから受ける印象そのままの、センチメンタルでウェットな言葉が歌われる。しかし、これが果たして本気なのか冗談なのかはわからない、人を喰ったようなムードはある。真偽のほどは、『ROCKIN’ON JAPAN 11月号』Ｐ176のインタビューを参照したい。

カップリングの、ミドルテンポの“サマータイム・ブルース”では、９分弱に亙ってジワジワと染みる気だるさに酔い、フェザーカミソリのＣＭソング“髭よさらば”に笑い、“話に夢中の魚は無感動”のディープなサイケデリアに恍惚を覚え、どっぷり浸れる約25分。やっぱり髭はおもしろい。（小松香里）