これぞ「アルバム」ならではの作品である。すでに先行シングルとして披露された曲もあるが、本作で聴き通すと印象はまた違うはずだ。これまでに体験したことのないタイプの高揚感に包まれ、何度も何度もリピートしてしまう。
　
ねごとサウンドのユニークさは、リズム隊とギター、キーボード、ヴォーカルがそれぞれ一見バラバラに走り出しながらも、要所でシンクロし、独特のグルーヴを生み出すところにある。そのワクワクする展開が楽曲単位だけでなく、アルバム全体に広がっているのが本作の特徴だろう。系統の異なる楽曲が一見ランダムに並ぶ構成でありながら、まるで複数の蛇が連なって球体を包み込むように、アルバム一枚で一つの輪を描いている。特に6曲目のミディアムナンバー“街”から7曲目の“潜在証明”の性急なイントロにつながるパートはスリリングだ。
　
ねごとは過度にエキサイトしたり、叫び声を上げたりはしない。むしろ、音の手触りはひんやりとしている。けれど、リスナーを驚かすような新しい音のアイデアを求める情熱において、本作はまちがいなく沸点に達している。（神谷弘一）