東京カランコロン、いちろーとせんせいに徹底インタビュー! 「東京再始動」を経て、新作『わすれものグルービィ』でたどり着いた新たな到達点とは?

東京カランコロン、いちろーとせんせいに徹底インタビュー! 「東京再始動」を経て、新作『わすれものグルービィ』でたどり着いた新たな到達点とは?

「あんなに楽しんでやったらいいんだ」って思ってもらえたらすごく嬉しい(いちろー)


――「東京再起動」後、あいかわらずライブも充実してそうですね。

せんせい ライブはだいぶ良くなってますね。

いちろー murffin discsに移籍した時から変化はしてるんですけど、そこからさらに進化してると思います。最近、「俺たちはお客さんに何を伝えたいのか、何を共有したいか」みたいなことを、メンバーと4~5時間話したんですよ。今までは音楽に比重がよってたから、曲によってメッセージが変わってたんですけど。せっかく同じメンバーでやり続けてるんだから、この5人で自分たちにしか言えないことがあるんじゃないかって話をして。

――それは今回のミニアルバム『わすれものグルービィ』を作る前の話?

いちろー このアルバムを作る前の打ち合わせの時ですね。

――具体的に、今のカランコロンが「お客さんと共有したいこと」を言葉で説明すると、どういうことだったんですか?

いちろー 言葉が見つからなかったんだよね、結局。「自由……?」とか、チープな言葉しか出てこなかったんですけど。

せんせい もや~とした言葉にしか表されへんかった。

いちろー でも、俺はその話し合いのあとも考え続けてて、少し見えたのが、4月、5月のツアーの時なんですよ。そのいちばん最後のライブで、すごく言いたいことが言えたんです。ざっくり言うと、自分たちは今、心が湧きたつことを常にやってる。でも、心が湧きたつことをやるっていうのが困難なこともあるじゃないですか。それでも、あくまでも自分たちはそれを楽しむっていうスタンスで音楽をやる。それを聴いてくれる人が、もし自分の心がワクワクしてない状態なのであれば、「あんなに楽しんでやったらいいんだ」って思ってもらえたらすごく嬉しいし、ラッキーだと思う、っていうようなことだったんです。お客さんの前では、もう少し上手く言えてたと思うんですけど(笑)。その音楽の楽しみ方は自分たちにしかないと思うから、そうじゃないと、カランコロンじゃない。それが、自分たちにしかできない、お客さんとのつながり方なのかなと思ったんです。

――でも、今までもカランコロンってずっとそうじゃないですか? 「これ、自分たちは楽しいと思ってるから、一緒に楽しもうよ」っていうスタンスでやってたと思うけど。

いちろー それを一方的に見せる気持ちだったかな。

せんせい たぶんお客さんを受け入れる余裕ができたんです。今までは「楽しんでもらう」って言いながらも、自分たちが、自分たちがって、発信してることのほうが多くて、肩の力が入ってた。それはライブでも、曲でも、MCでも、全部に言えるけど。上辺では、今までのカランコロンでも楽しいっていうのは伝わってたと思うけど、自分たち目線でしかないところも多かったんじゃないかなと思ってて。最近のライブのMCのいちろーさんの姿を見てると、ちゃんとつながっていこうとしてる感じに見えるんですよね。これは、年齢を重ねたっていうのもあると思うけど。

いちろー 今まで、お客さんとつながるっていうことを考えたことがなかったんです。いかにいい意味で裏切るかっていうことを考えてたから。

――なるほどね。「お客さんとつながろう」とか、ライブを始めて1~2年ぐらいのバンドでも、本質を掴めてるかは別にして、結構言うことだけど。そこにバンドを10年近く続けて気づくのが、カランコロンっぽいですよね。「え、今!?」っていう。

せんせい 本当に不器用なんですよね(笑)。


「かわいい」と言われようが、「かっこいい」と言われようが、それも委ねようと思ったんですよね(せんせい)


――アルバムの制作に関しては、その話し合い以降から曲を作り始めたんですか?

いちろー うーん、楽曲の半分以上が前のアルバムを出したあとぐらいにできてたんですよ。コンスタントに作り溜めてたから。

せんせい いっぱいある曲のなかから選んだ6曲ですね。

いちろー 前回の『東京カランコロン01』っていう作品は、自分たちの殻をぶち壊すために腕力が必要だったんですよね。服を脱ぐ、裸になるみたいな気持ちであったと同時に、力も入ってたんです。その爆発力もあって、結構骨太なアルバムになったんですけど。今はその壁を越えて、「すげえ楽しいね」って思える状態なので。いい具合に力が抜けて、自分たちが面白いなと思うことをやれたと思います。

――今回のアルバムを聴いた時、すごくかっこいい作品だなと思ったんですよ。カランコロンって、いわゆるキラキラとしたポップミュージックっていう言い方もするけど、今回はよりルーツ色のあるロックンロールの匂いもするし、ソリッドな感じがするというか。

せんせい そうなんだ! それはびっくり。今回は力を抜いて作ったアルバムやから、それがどう(聴き手に)映るかはわからないと思ってて。「かわいい」と言われようが、「かっこいい」と言われようが、それも委ねようと思ったんですよね。それよりも、いかに自分たちがリラックスして演奏するかのほうが大事だったんですよ。

いちろー ひとつ前に『ギブミー』っていうライブ会場限定の作品を作ったんですけど、その時から思ってるのが、「かっこいいポップソングを作りたい」っていうことなんです。自分にとっては、「かっこいいポップス」ってキラキラしてるものでもあるんですけど、エバーグリーンな音とかフレージングが大事なんですよね。簡単に言うと、50年後に聴いても「かっこいいよね」って思えるかどうか。それを無理くり、筋肉を絞り出してパンチしてるんじゃなくて、ジーパンとTシャツだけでかっこよく見せたのが今作っていう感じなのかな。それが見方によっては、ソリッドでかっこよく映るのかもしれないですね。

――うん。その「かっこいいポップス」を象徴してるのが、今作だと、“ユートピア”とか“ないないない”だと思うんですよ。

いちろー ああ、普通に考えたら、その2曲はロックな作りですよね。

――そうそう、“ないないない”のイントロなんて、すごくロックですよ。

いちろー なんかね、俺の「かっこいい」って、オルタナなんだろうなと思うんですよ。

――ああ、なるほどね。

いちろー 最近って、フランク・オーシャンとかが一種の「かっこいいポップス」の世界基準みたいになってるじゃないですか。でも、俺はこういうことじゃないなと思って。狂ったように歪んだギターが鳴ってるだけで、俺の幼心が燃えるんですよ(笑)。俺の「かっこいい」はそうで。でも、好きなメロディはポップスだったりするんですけど。

――サウンドの構築美とかメロディラインはポップスだけど、ところどころにロックへの憧れみたいなものがあるんでしょうね。

いちろー 対バンとかで、結構いろいろなバンドを見るんですけど、メンバーと「すげえいいね」って話すのはオルタナなんですよね。いわゆる「東京カランコロンを好きな人は、これも好きだよね」って言われるものとは、ちょっと違ったりしてて。

――たとえば?

いちろー 愛はズボーンとか。

――へえ。「東京カランコロン好きな人は、これも好きだよね」って紹介されそうなものとは、たしかに違いますね。

いちろー だから、うちらは自分たちのことを、ある程度、オルタナだと思ってるんです。

せんせい 私ら、事務所に入る前はオルタナ勢とよくライブをやってたんです。

いちろー そうなんだよね。

せんせい だから、もともとオルタナ出身なんだよね。今も仲がいいし。

いちろー でも、気づいたら、ポップスとかギターロックとか、そのへんと一緒にやるようにもなったんですけど。最初は、八十八ヶ所巡礼とか。あれは自分たちではプログレって言ってますけど。オワリカラとかね。だから、自分たちが思ってる自分たち像と、お客さんが持ってる自分たち像がちょっと違うんだって気づいたんです。単純に、ギャーンってギターがヒートアップすると上がるっていう。

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