アンファン・テリブル、ちょっと育つ

アイスエイジ『ユア・ナッシング』
2013年02月27日発売
ALBUM
アイスエイジ ユア・ナッシング
サウンドも、『ニュー・ブリゲイド』というタイトルももろ80年代のハードコア・パンク黎明期を彷彿とさせる、退廃性と武闘派な攻撃性をそなえたコペンハーゲン出身のアイスエイジの2年前のデビュー作。当時はティーンだったが、成人した彼らが放つ2枚目はまず『ユア・ナッシング(てめえらは無意味)』っていう題名からして、丸く大人になったというより、社会と距離を置いた姿勢は激化している様子がうかがえる。リード・トラック“エクスタシー”もそのアッパーな名前とは違い、コーラスでは《プレッシャー、プレッシャー》とわめき散らす、どこか荒涼としたハード・パンク・ナンバー。デビュー作の向こう見ずな精神はまったく失われていないようである。
 
もちろん成長がなかったわけではない。メタリックに進化する以前のハードコア・パンク・サウンドに、ゴスやポスト・パンクに通じるニヒリスティックな歌詞とどんよりしたヴォーカリゼーションを融合させた、ノスタルジックであると同時にユニークなサウンドが評価され、老舗優良レーベルのマタドールに拾われた彼らは、まず単純に楽器が上手くなった(いや、初来日当初とかほんと下手でした)。それゆえに、前とは違い、肉体や精神だけではなく、感傷を刺激する曲も書けるようになった。モノトーンなヴォーカルも限られたレンジの中、激情と哀愁を両立できているし、ピアノを使っている曲もあるぐらい。全12曲28分と前作同様に潔いコンパクトなアルバムだが、逆に2分パンク・チューン1曲1曲のエモーションの幅が広がり、デンマークの若きならず者たちの魂の叫びはより流暢に響く。(内田亮)
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