だが、録音作品としての仕上げはあまりにラフ過ぎないか。ぼくが聴いているのは24bit/96kHzのWAVファイルだが、どうもきちんとしたマスタリングをやってないのではないか、という思いは残る。録音状態は明らかに昨年出た旧譜リマスターの方がいいし、曲間の長さや繋ぎ方、フェイド・アウトの仕方なども、無造作というよりは雑に聴こえる。ミックスも荒っぽく、完成品というより急仕上げのデモ・テープのように聴こえる瞬間もある。もちろん『ラヴレス』の緻密さとは違う、いわばガレージ・バンド的な線を狙っている、という見方は成り立つと思うけれど、ぼくは、完全自主制作で、おそらくは(エンジニアとしてプロではない)ケヴィンひとりの手によって仕上げられたゆえの弊害と見る。来日公演で“ニュー・ユー”が2度も演奏やり直しとなったのは笑ったが、ここに収められた演奏はいわばプロトタイプで、これからツアーで何十回と演奏するにつれ次第に完成していく、ということかもしれない。
もう20回以上は聴いたと思うけれども、いまだにゴツゴツとひっかかり、素直にのみ干すことができないのは、マイブラらしい。まだ当分付き合いは続きそうだ。(小野島大)