CD、LPはまた違う音になっている可能性あり

マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン『mbv』
2013年03月11日発売
ALBUM
マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン mbv
手放しで最高と言える部分と、そうでない部分が同居している。楽曲に関しては素晴らしい。アイディア、方法論、演奏、サウンド・プロダクションとも、整合性やバランスを求めるというよりは故意に均衡を崩したような、いわば乱調の美とも言うべきスリルがあって、特に7曲目以降のぶっ飛び方は圧倒的だ。
 
だが、録音作品としての仕上げはあまりにラフ過ぎないか。ぼくが聴いているのは24bit/96kHzのWAVファイルだが、どうもきちんとしたマスタリングをやってないのではないか、という思いは残る。録音状態は明らかに昨年出た旧譜リマスターの方がいいし、曲間の長さや繋ぎ方、フェイド・アウトの仕方なども、無造作というよりは雑に聴こえる。ミックスも荒っぽく、完成品というより急仕上げのデモ・テープのように聴こえる瞬間もある。もちろん『ラヴレス』の緻密さとは違う、いわばガレージ・バンド的な線を狙っている、という見方は成り立つと思うけれど、ぼくは、完全自主制作で、おそらくは(エンジニアとしてプロではない)ケヴィンひとりの手によって仕上げられたゆえの弊害と見る。来日公演で“ニュー・ユー”が2度も演奏やり直しとなったのは笑ったが、ここに収められた演奏はいわばプロトタイプで、これからツアーで何十回と演奏するにつれ次第に完成していく、ということかもしれない。
 
もう20回以上は聴いたと思うけれども、いまだにゴツゴツとひっかかり、素直にのみ干すことができないのは、マイブラらしい。まだ当分付き合いは続きそうだ。(小野島大)
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