レッツ・勉強

ダフト・パンク『ランダム・アクセス・メモリーズ』
2013年05月22日発売
ALBUM
ダフト・パンク ランダム・アクセス・メモリーズ
とにかくわかりやすいアルバムである。『ランダム・アクセス・メモリーズ』ということで、過去の記憶から様々なサウンドが抽出されていて、だから、明確なコンセプトが貫かれた作品ではあるが、それぞれの曲が70Sソウル、AOR、ディスコ、プログレ、ウェストコースト、オールドスクール・ヒップホップなどをハッキリと象っていて、そういう意味で、センスが優れたミックステープに近い感触を受ける。どの曲も生演奏されていて、ノスタルジックなムードがアルバム全編に漂うが、だからってこれが後ろ向きの作品とは誰も思わないだろう。なにしろPCひとつで作れちゃいます、というエレクトロ・ミュージックのDIY精神を悪用して、イージーな金儲けに走る最近の軽薄なEDMに対する痛烈な批判であることは手に取るようにわかる作り込みだから。

にしても、ほんとに教科書みたいなアルバムである。ソウルと言えばナイル・ロジャース、AORと言えばポール・ウィリアムズ、シンセと言えばジョルジオ・モロダーみたいに、それぞれのサウンドに合う最適のゲストが何人も招かれていて、それらの音楽をリアルタイムで経験していない世代に、そのサウンドとはどういうものであり、その第一人者が誰であるのかがわかりやすくプレゼンされている。そもそもダフト・パンク自体、それらの音楽の大半をリアルタイムで体験した世代じゃない。全体的にはアッパーで、祝祭的な意味合いの強いレコードだが、彼らの勤勉さが際立つ実にストイックな作品でもあるのだ。 (内田亮)
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