4年ぶりとなるムームの新作である。本作の最大のトピックはオリジナル・メンバーの双子の姉妹の片割れ、ギーザ・アンナが11年ぶりに復活を果たしたことだろう。ギーザの復帰によって、彼女のヴォーカルが入ることでここまでドラスティックにムームのサウンドが初期化、いや、有機化されていくとはちょっと驚きだったけれど、ムームを初めて聴いた時の情景が鮮やかに蘇るような、いい意味でブループリント的な初々しさ、手触りを感じる作品だ。
プロユースのスタジオではなく、農場やキッチンでレコーディングしたセルフ・プロデュース作品だということも、本作のその手触りに関係しているかもしれない。近年のムームはアコースティックとテクノロジーの幅や落差を図る作品、その両方の可能性をなるべく広げようとする作品を作ってきたが、本作ではガジェットでローファイな生楽器の奏でる音と打ち込みの音の質感がほぼイコールで溶け合い、アコースティックとテクノロジーが予め共存した未来の御伽話のような世界が広がっていく。拡大ではなく調和。これぞムーム、彼らがアイスランドの秘宝たる所以を再認識できる一枚なのだ。 (粉川しの)
再びの秘境
ムーム『スマイルウーンド』
2013年09月11日発売
2013年09月11日発売
ALBUM