10代最後の、そして永遠の傑作

ジェイク・バグ『シャングリ・ラ』
2013年11月20日発売
ALBUM
ジェイク・バグ シャングリ・ラ
彗星のように登場し、自らの才能に無自覚なまま頂点を極めた早熟の天才は、たいてい自分を理解しようとするセカンドを作るものだ。時に他者の協力を得て、時に環境を変えて、自分の音と客観的に向き合う努力をすること、それはある意味で無自覚な天才が才能をコントロールして末永く活用できるプロになる上で必然の道筋でもある。プロデューサーにリック・ルービンを迎え、米マリブのスタジオでレコーディングされたジェイク・バグの本作も、一見そんな道筋に則った一枚に思える。

〝スラムヴィル・サンライズ?、〝ホワット・ダズント・キル・ユー?といった前半のナンバーはいかにもルービンと西海岸の空気を吸いながら作ったらしきハード&ヘヴィなグルーヴ・ナンバーで、A・モンキーズのセカンドにも似た加重・加速方向への進化作に思える。しかし、その印象はミニマムなバラッドが並ぶ中盤の〝ア・ソング・アバウト・ラヴ?あたりから全く違うものに変わっていく。ジェイクの歌と声、それは他者の介在や環境の変化と結局のところ一切関係しないのではないか? そんな予感は後半の〝パイン・ツリーズ?、〝シンプル・プレジャーズ?で確信となる。

ジェイクは恐らく、独りで曲を書き始めた14歳の時から既に「この場所」にいたのだ。成長や進化といった時間と共に流れゆく価値感とは全く別の、表現者本人に動かし難く根差した普遍性をここまで感じる音楽というのも滅多にないし、これまでも、そしてこれからも彼の足元は揺らぐことはない、そう確信できるとんでもないアルバム。(粉川しの)
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