〝スラムヴィル・サンライズ?、〝ホワット・ダズント・キル・ユー?といった前半のナンバーはいかにもルービンと西海岸の空気を吸いながら作ったらしきハード&ヘヴィなグルーヴ・ナンバーで、A・モンキーズのセカンドにも似た加重・加速方向への進化作に思える。しかし、その印象はミニマムなバラッドが並ぶ中盤の〝ア・ソング・アバウト・ラヴ?あたりから全く違うものに変わっていく。ジェイクの歌と声、それは他者の介在や環境の変化と結局のところ一切関係しないのではないか? そんな予感は後半の〝パイン・ツリーズ?、〝シンプル・プレジャーズ?で確信となる。
ジェイクは恐らく、独りで曲を書き始めた14歳の時から既に「この場所」にいたのだ。成長や進化といった時間と共に流れゆく価値感とは全く別の、表現者本人に動かし難く根差した普遍性をここまで感じる音楽というのも滅多にないし、これまでも、そしてこれからも彼の足元は揺らぐことはない、そう確信できるとんでもないアルバム。(粉川しの)