聴いてすぐに思い出したのは今年の2月に出たボニー“プリンス”ビリーとドーン・マッカーシーのデュエット作『What The Brothers Sang』のことだった。エヴァリー・ブラザーズのかなりマニアックな曲を中心としたカヴァー集だったが、こちらは彼らのセカンド・アルバムを丸ごと取り上げている。このタイミングの一致はシンクロニシティというやつだが、ビートルズやサイモン&ガーファンクルにも大きな影響を与えた歴史的なデュオが自らのルーツを探ったアルバムが同意識を持つ表現者の琴線に触れたのだろう。
とくに今回の発案者であるビリー・ジョーにとって『アメリカン・イディオット』以後、向かい合い続ける内なるアメリカン・ルーツと、そこから生まれる音風景の検証作業の一つと位置づけられる。偶然、そのアルバムを手に入れたのがきっかけというが、育つ過程で彼らの歌声や音楽性は染み込んでいるわけで、それがどう自分の中に在るのか探りたかったのだろう。相方としてのノラ・ジョーンズも文句なしで、オーソドックスでトラディショナルな響きの陰になっているものがきわめてスリリングだ。(大鷹俊一)